PRESENTATION OUTLINE
7章 消費生活の諸問題
1 消費者保護基本法から消費者基本法へ
貨幣経済のもとで、労働力を社会に提供し、それによって収入を獲得し、生活を維持する労働者階級が形成されたのである。消費者は、生産物の中から好みに合ったものを選択するようになってきた。そして、労働者階級の収入の増加とともに、消費生活は盛大となり、生産活動を刺激し、その動向を支配するようになってきた。いわゆる大衆消費時代、あるいは大量消費時代である。185
わが国が大量消費時代に入ったのは、1955年頃である。その頃を境として、国民の消費道徳や生活に対する考え方が著しく変化し「消費は悪徳」から「消費は美徳」といわれるようになってきた。このような消費生活の質的な変革を消費革命ともよんでいる。その内容は、①高級消費財の普及 ②消費の平準化 ③割賦の普及 ④流行の大規模化 ⑤インスタント食品や調理済み食品の普及などが主なものである。 185
◯消費者基本法
わが国では、1968年5月に消費者保護基本法が制定された。消費者と事業者が自由で公正な取引を行うためのルールを整備し、悪質な事業者の取り締まりや消費者被害の救済に関する制度を充実させる消費者の自立支援が求められるようになった。そこで36年ぶりに消費者保護基本法が改正され、消費者基本法と名を改め、2004年6月に施行された。186
消費者基本法は、消費者と事業者との間の情報の質と量や交渉力等の格差を踏まえ、消費者の権利を尊重し、その自立を支援するなどの基本理念を定め、消費者の利益を擁護・増進するための総合的な政策を推進することにより、国民の消費生活を安定・向上させることを目的としている。消費者の権利として、①安全が確保される ②自主的、合理的な選択ができる ③必要な情報が得られる ④消費者教育が受けられる ⑤意見が消費者政策に反映される ⑥被害の救済が受けられることなどを盛り込んでいる。 187
1995年に施行された製造物責任法(PL法)は、それまで苦情処理委員会を作るとか、消費者の事業者に損害賠償を求めて、裁判所で争う方法がとられていたが、製品が高度化・複雑化し、被害者を円滑・適切に救済するという観点から、製造者に過失がなくても、製品に欠陥があれば、賠償責任を負わせられるというもので、被害者の立証の負担を軽くし、製造業者に高度な製品安全への認識を期待して制定された。187
2 食品の消費問題
◽️製造・販売業者の義務と消費者の役割
◯食品の衛生・品質・栄養
第一に、消費者が購入する食品は、衛生的で安全でなければならない。これに関しては食品衛生法があり、食品の製造・販売に携わるものは、添加物や特定原材料(アレルギー原因物質)に配慮し、保健機能食品などの取り扱いにも注意するなど、食品を衛生的に扱う義務がある。 188
第二に、消費者は常に一定の品質のものが得られるようでなければならない。そのため、JAS法が定められている。なお、食品衛生法及びJAS法では、食品の賞味、消費期限及び遺伝子組み換え食品に関する表示の規定がある。製造・加工後に数日で腐敗しやすい食品には「消費期限」長期間の保存が可能な食品には「賞味期限」を表示することになっている。 188
・消費期限…弁当、サンドイッチ、豆腐、食肉、生麺、生菓子など
・賞味期限…即席麺、菓子類、ハム、ソーセージ、かまぼこ、牛乳など
第三に、消費者は栄養の過剰摂取などによって健康に障害を起こすことがあってはならない。健康増進法により、加工食品に表示する場合の栄養成分・熱量の表示基準が定められている。
(動画)189
◯食品表示法
販売する加工食品の栄養成分表示が義務化され、飽和脂肪酸と食物繊維は推奨表示となり、ナトリウムの表記は(食塩相当量)に変更された。また、食品表示法への一元化とともに、機能性表示食品制度が導入された。機能性表示食品は、特定保健用食品(トクホ)となり、栄養機能食品についで、機能性を表示できる3番目の食品になった。189
◯加工食品の場合の一括表示項目
①名称
②原材料名
③内容量
④消費期限または賞味期限
⑤保存方法
⑥栄養成分及び熱量
⑦製造者名とその所在地
190
◯販売価格関係
消費者は商品を適正価格で購入する権利があり、この消費者の利益を守るために、独占禁止法と公正競争規約がある。消費者が安い商品を選択できるように、例えば100gあたりなどの単位価格表示が、全国の自治体で推進されている。過大広告や不当な景品をつけることを防ぐための法律もある。190
◯生鮮食品の生産地
肉類、野菜、果物、魚介類などの輸入品が増加するにつれて、消費者の残留農薬や添加物への関心が高くなり、店頭で生産国(生産地)を表示することが増えている。
①豚牛肉…オーストラリア、アメリカ等
②魚介類…中国、アメリカ、ロシア等
③野菜類…中国、オーストラリア等
日本の食料自給率はカロリーベースにすると40%といわれている。 191
◯牛乳の鮮度
牛乳の品質表示には、乳脂肪分、タンパク質、糖質、無機質からなる無脂乳固形分、殺菌温度と時間があり、開封しないで10℃以下に保存すれば、5〜7日は鮮度が落ちない。開封した場合は数日内に消費しないと品質が悪くなる。LL (ロングライフ)牛乳は開封しなければ3ヶ月ほど室温で保存できる。また、脂肪を少なくした低カロリーのローファット牛乳は加工乳として扱われている。 192
◯加工食品
主に食品の保存性、栄養価、簡便性を高めることを目的として加工した食品のこと
①レトルト食品…平均して塩味が強すぎる傾向あり
②インスタント食品…家庭で利用する場合には、さらに肉類や野菜類を加えて調理する必要がある。
③調理、冷凍食品…餃子、焼売、コロッケ、エビフライなどはやはりデンプン質が多く、動物性タンパク質が少ない。 194
3 被服の調達と衣料品の消費問題
◽️被服の調達
被服を入手するには、次のような5つの方法がある。
①自分で作る ②注文して作る
③既製品を買う ④貸衣装を利用する
⑤譲り受ける
今日では、少なくとも日常は既製服を主体にした衣生活が主流を占めている。 195
4 化粧品の消費問題
化粧品の主成分は、安価であり、しかも製造技術も比較的容易である。これらに添加される香料は高価であるといわれるが、添加量は微量である。したがって、化粧品類はもっと適正価格に引き下げられて良いと考える。一方、高い化粧品ほどよく売れるという現象がある。メーカーは容器のモデルチェンジや特殊な香料を用いて高い価格を維持しようとしているが、消費者としては賢明な対応が必要である。 199
問題B(演習)P.194
◯ごみ処理
札幌市のごみ分別で、次の6種類には、どんなものがあるのか、GoogleやAIを使って調べなさい。
①燃やせないゴミ ②燃やせるゴミ
③容器包装プラスチック
④ビン・カン・ペットボトル
⑤大型ゴミ ⑥小型家電